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書籍⑯入門『地頭力を鍛える』32のキーワードで学ぶ思考法

前回の書籍⑮に続き、考えるためのトレーニング本です。

 

タイトル 入門『地頭力を鍛える』32のキーワードで学ぶ思考力
出版社 東洋経済新報社
著者 細谷功
価格(税別)(購時) 1,500円
   
中小企業経営者 ☆☆☆☆
中小企業診断士勉強者 ☆☆☆

 

<内容>

今後人間はAIには出来ない上流、つまり解決するべき問題や目的を見つけることにシフトするべき。そのためには自分の頭で考えることが必要であり、この本では自分で考えること、つまり思考に関する32のキーワードの【What】【Why】【How】を習得を目指している。

 

【What】そのキーワードの基本的な定義と意味
【Why】そのキーワードが重要な理由
【How】そのキーワードの具体的な活用補法

 

①基本の思考法を抑える

(1)戦略的思考

「そもそも戦う必要があるのか?」、行列のできる店で人気のラーメンを食べたいならば「並ばないで食べる方法」を考えるのが戦略的思考。

 

(2)ロジカルシンキング

「誰が見ても」「話がつながっている」、筋道が通っている考え方。多数の人を説得する際に必要な「共通言語」となるもの。

理論的であるとは、話の根拠があう、一貫性がある、客観的な見解、事実に基づいている、感情に左右されない、最終的な結論が明確であること。

 

(3)仮設思考

「結論から考える」ことで、時間や情報がない場面でも、最も効率的に目標達成、問題解決にたどり着くための「思考の試作」=仮説。

「はじめ」からではなく、「おわり」から考える、「できること」ではなく、「やるべきこと」から考える、「自分」からではなく、「相手」から考える。

不確実性の高い状況だからこそ、仮設思考の必要性が高まっている。

 

(4)フレームワーク

「思考の癖」を矯正してくれる「型」のようなもの。アイディア出しの助けになるが、使いどころを間違えないようすることが重要。

 

(5)具体と抽象

思考の原点にあるのが「具体→抽象→具体」の往復運動。「言葉」や「数」も抽象化によって生み出されており、思考の基本動作。

ビジネスの世界では、類似の成功事例を一般化して成功パターンやビジネスモデルが生まれ、そのビジネスモデルに沿って具体的な商品やサービスを生み出すこと。

 

(6)「なぜ」

「5W」のうち、「Why」以外の「4W」が「点」で知識を問うのに対して、「Why」だけが「線」でつながる(原因と結果、目的と手段など)質問となる。

 

(7)アナロジー思考

他の業界やビジネス以外の世界で行われていることを、自分の業界や製品・サービスに適用できないか、と考える「遠くから借りてくる」思考法。

 

②二項対立で考える

(8)二項対立

「抽象化」において必須の概念で、例えば「西と東」のように両極を定義することにで、一つのものの見方の「座標軸」を提示する。

二項対立と二者択一は別の考え方。二項対立はアナログ的、二者択一はデジタル的。

 

(9)因果と相関

因果とは、原因と結果、またその一方向の関係を表す。相関とは、2つの事象が単純に関わりあっていることを意味する。

因果関係は相関関係の一部。相関関係は客観的な事実、因果関係は何らかの人間の解釈が入っていることが多い。因果関係がわかると「先を読める」。

 

(10)演算と帰納

理論を展開するためにはの典型的な2つの手法で、演算は「そう決まっている」(一般的に正しいとされている法則)から、帰納は「多くが層だから」(多くのサンプル)という推論の方法。

 

(11)発散と収束

情報やアイディアを出すのが発散、まとめるのが収束。発散と収束の成否がアウトプットの品質を決める。

今どちらのフェイズにいるかを意識することが重要。

 

(12)理論と直感

地頭力のベースとしての両輪をなるもので、仮設思考力、フレームワーク思考力、抽象化思考力のいずれも、論理思考と直感の両方が必要。

 

(13)理論と感情

「計画を立てる」場面では「理論」が重要、「施策の実行で『人を動かす』」場面では「感情」が重要など、上手く使い分けをすることが重要。

 

(14)川上と川下

川下のオペレーションはAI(人工知能)の得意とする仕事であり、川上のイノベーションにこそ人間の考える力が必須。

 

③コンサルタントのツール箱

(15)ファクトベース

「ファクト(事実)に基づいて考える」とは「事実と解釈を切り分ける」ことで、思い込みにとらわれない意思決定が可能になる。
ファクトとは、「いつ」「どこで」「誰が」をできるだけ具体的に、例えば固有名詞や数字で表現したもの。

ロジカルシンキング=ファクト+ロジック

 

(16)MECE

問題の原因や具体的な解決策を「モレなく、ダブりなく」考えることで、無駄な作業や後戻りが減って、効率的に仕事を進めることができる。

MECEで考えるためには「全体をとらえる俯瞰的な視点が必要」。

 

(17)ロジックツリー

「ロジックを」(要素間の関連性をロジックに)表現したツリー構造の図で、さまざまな課題の全体像を理論的かつ網羅的に表現することが可能となる。

 ・原因を深堀するためのWhyツリー(トラブル原因分析)
 ・目的に対する手段や施策を抽出するためのHowツリー(コストダウン施策抽出)
 ・全体を部分に展開するためのWhatツリー(顧客セグメンテーション)

 

(18)2×2マトリックス

縦と横の2軸をさらに2つに分けて、2×2=4つの象限を用意し、さまざまは事象やデータをマッピングすることで問題解決の糸口を探る。

 ・アナログ型:軸は「数直線」、エリア区別は相対的、象限内の位置に意味あり
 ・デジタル型:軸は2軸(Yes/No軸)、値は不連続変化、エリアの区別は絶対的、象限内の位置に意味なし

 

(19)フェルミ推定

「シカゴにピアノ調律師は何人いるか?」というような問題に対して、情報や時間が限られる中でも仮説を立てて推測する思考法。
重要なのは「正解」ではなく、「思考プロセス」

 

④AI(人工知能)vs.地頭力

(20)地頭力

3つの思考力と3つのベースの組み合わせで、「結論から(仮説思考力)、全体から(フレームワーク思考力)、単純に(抽象化思考力)考える」ことが基本。

ビジネスで必要な知的能力:①知識力(業界知識や各種専門知識等)、②対人感性力(対人的な感情や心理を扱う能力)、③地頭力(自ら考える力)

地頭力⇒①知的好奇心+②理論思考力+直観力+③仮説思考力+フレームワーク思考力+抽象化思考力

 

(21)問題発見と問題解決

問題発見と問題解決とでは思考回路や必要なスキル、価値観が異なることを認識したうえで、使い分けをする必要がる。

川上:問題発見力、川下:問題解決力

 

(22)AI(人工知能)

AIが得意なことはAIに任せる。人間は「問題そのものを考える」など、人間にしかできないことに能力を発揮すればよい。

 

(23)ビジネスモデル

個別の施策や戦術ではなく、どの業界にも汎用的に適用できるような収益の上げ方の共通パターン。

「具体的に何を扱っているか?」よりも「要するに何が肝心なのか?」という抽象度の高いレベルでビジネスの特性をとらえる必要がある。

 

(24)多様性

「指標を増やして考えること」であり、イノベーションを生み出すための思考回路(の転換)には、画一性ではなく多様性が求められる。

 

(25)未来予測

新しい動きを、個別の具体例としてではなく抽象化してとらえると、多くの他のものにそれが転用されていくことが見えてくる。

 

⑤「無知の知」からすべては始まる

(26)無知の知

「自分は何も知らない」という自覚があればこそ、新しいことを学ぼうという知的好奇心を持つことになり、思考回路が起動する。

 ・概知の概知⇒問:ある、答:ある⇒ルーティンワーク
 ・概知の未知⇒問:ある、答:ない⇒問題解決の対象
 ・未知の未知⇒問;ない、答:ない⇒問題発見の対象

 

(27)知的好奇心

自ら能動的に考えることの源泉となるのが知的好奇心。大人になっても「Why型」の好奇心を持ち続けることが大切。

 

(28)能動性

知識の習得は受動的な姿勢でもある程度は可能なのに対して、思考力は「自ら考える」という能動的な姿勢でないと身につかない。

 

(29)常識の打破

「常識的に振る舞う」ことは、思考停止にもつながる。「そんなことありえない」ということこそが「常識の打破」になる。

 

(30)「疑う」こと

「自分の頭で考える」とは、すべてを「疑う」こと。何であれ「信じてはいけない」。「信じる」とは思考停止を意味する。

 ・顧客の要望を疑う⇒フォード
 ・現場の意見を疑う

 

(31)認知バイアス

人は皆、物事を見るのに必ず何らかの偏った見方をする。「思考の癖」である「認知バイアス」の存在を意識しておくことが重要。

 

(32)メタ認知

「幽体離脱」して自分自身を上から見る、他人を見るのと同様に見る視点になっているか。それが「気づき」のメカニズム。

 

<感想>

これを読むと考えるのって大変と思ってしまいそうです。
(26)以降が考える時の姿勢であり、これらを頭に常に置きながら、、常に誰かに説明するという前提で「結論から、全体から、単純に考える」ことによって、自然とこの力が付いてくると思います。
是非やってみましょう。