「餃子屋と高級フレンチレストランでは、どちらが儲かるか?」で有名な著者のドラッカーについての著書第二弾です。
タイトル ドラッカーと生産性の話をしよう
出版社 KADOKAWA
著者 林總
価格(税別) 1,400円
中小企業経営者 ☆☆☆
中小企業診断士勉強者 ☆☆☆
<内容>
物語作りなので直ぐに読めますが、多少内容は浅い気がします。ただ、私も気がつかなかった点を指摘してくれているので今回載せてみました。特にマネジメントで有名なドラッカーを使って生産性について話すという趣旨が興味深く感じました。
内容は、偶然飛行機のファーストクラスで出会った3名の話で、偉そうに振る舞った若手の経営者が、実は大会社の会長に救われ、その場に偶然居合わせた若い女性が復活のポイント人物になるという物語です。面白そうですね(笑)。
以下に興味深いドラッカーの言葉をピックアップしました。いろいろなドラッカーの本から取っているので、この1冊でいろいろな本のエッセンスを読める所は良いと思います。
①顧客は満足を買う:
顧客は製品を買っていない。欲求の充足を買っている。彼らにとっての価値を買っている。10代の少女にとって、靴の価値はファッションにある。お洒落でなければならない。価格は二の次であって、耐久性など全く価値がない。
②第二のわなー利益志向:
起業家というのもは自分が主人公と思っている。ここから第二のわなが生まれる。彼らは利益が第一だと考える。利益は第二である。キャッシュフローが第一である。
③真摯さが経営者の絶対条件:
つまることろ、いかなる一般教養を有し、マネジメントについていかなる専門教育を受けていようとも、経営管理者にとって決定的ン重要なものは、教育やスキルではない。それは真摯さである。
④組織はトップで決まる:
組織の精神はトップで形成される。組織が偉大たりうるのはトップが偉大な時だけである。組織が腐るのはトップが腐るからである。「木は梢から枯れる」との言葉通りである。したがって、範とすることのできない者を高い位置につけてはならない。
⑤生産性の向上の舞台は現場にある:
生産性とはプロセス全体、企業全体、経済活動全体におけるあらゆる資源の生産性の総体である。そして何よりも、生産性が向上しあるいは低下し、改善しあるいは悪化する舞台は、個々の工場、店舗、事務所である。したがって生産性の向上は、まさにマネジメントの責任である。
⑥あらゆる資源の生産性をマネジメントせよ:
生産性の向上には、あらゆる資源をマネジメントすることが不可欠である。一つの資源の生産性を上げても、他の資源の生産性を下げたのでは、全体の生産性を上げることはできない。
⑦売掛金は顧客への融資である:
資金を売掛金、すなわち顧客に対する融資に回している企業がある。そのような顧客に対する融資については、何を見返りとして得るかについて、徹底的な検討が必要である。
⑧資金の使い途を明らかにせよ:
資金を、高価な機会に投下している企業もある。高価な機会が遊んでいることほど、非生産的でムダなことはない。したがって、まず着手すべき最も重要な仕事は、資金を何に使っているかについて数字を明らかにすることである。
⑨物的資源を明らかにせよ:
物的資源は、組織によっては大きくなる。病院にとってはベッドである。重症患者のベッドは、妊婦のベッド、人間ドックのベッドとは違う。中心的な物的資源が何であるかを明らかにすることは、そのこと自体、すでにリスクを伴う意識決定である。
⑩会社は人間の組織体である:
企業はその従業員の質いかんによって、作られも、こわされたりもするという、人間の組織体である。
⑪知識は情報を特定する仕事に達成に応用する能力:
知識はすつれて人間的な資源なのである。知識は、本の中に求められはしない。本は情報を載せているに過ぎない。知識とは、情報を特定の仕事の達成に応用する能力なのである。これは人間、すなわち人間の頭脳とか手技からだけ発現する。
⑫知識労働とは頭脳労働のこと:
ブルーカラーが担ってきた「労働集約」的な仕事が重みを失い、ホワイトカラーが中心をなす「頭脳集約」的な仕事、すなわち「知識労働」がますます重要性を増してきた。
⑬知識労働者は仕事の質で勝負する:
もっぱら仕事の質で勝負することに特徴がある。肉体労働はしない。彼らはきわめて高度の専門知識を有して、組織の中で他の専門家と協働して仕事を行う。
⑭起業は知識を経済価値に変換するプロセス:
企業とは、外部にある資源、すなわち知識を、外部での成果、すなわち経済価値にまで、変換するプロセスであると、定義できるのである。
⑮知識労働の生鮮性を高める6ケ条:
(1)仕事の目的を考える
(2)生産性向上の責任を負う
(3)継続してイノベーションを行う
(4)自ら継続して学び、人に教える
(5)量より質の問題であることを理解する、
(6)知識労働者は、コストではなく、資本財であることを理解する
⑯知識労働者はなすべきとこを自ら決める:
なすべきとこを決めるのは知識労働者本人である。何をなすべきかの答えは複雑でありうる。デパートの場合、買い物を一回当たりの売上も正しいし、リピート率も正しい。
⑰時間は常に不足する:
成果を上げる者は、時間が制約要因であることを知っている。その供給は硬直的である。需要が大きくとも、供給は増加しない、価格もない。限界効用曲線もない。簡単に消滅する。貯蓄もできない。永遠に過ぎ去り、決して戻らない。したがって時間は常に不足する。
⑱時間の記録は継続してとるべし!:
継続して時間の記録をとり、その結果を毎月見ていかなければならない。最低でも年二回ほど、三、四週間記録をとるべきである。
⑲知識労働者の生産性向上で問うべきこと:
知識労働やサービス労働者の生産性向上をはかる場合に、まず問うべきは、「何が課題か。何を達成しようとしているのか。なぜそれをするのか」でなければならない。
<感想>
この中でポイントは、従来は経営資源は、人、モノ、金の3要素でしたが、人を肉体労働者(時間)と知識労働者(知識)の2つに分けて生産性を考えたことになります。
そのため、その後の話では、①肉体労働は機械等を導入することにより生産性を向上(労働時間の短縮)させられるので、②如何に知識労働者の生産性を上げるかを検討しています。
さらに、モノと金の生産性の測定も大切なことを伝えています。上記の⑥から⑨に当たります。
最後は人時生産性の話になっています。これは京セラのアメーバ経営にもつながる話で、ドラッカーここまで具体的に生産性を上げる話をしているとは思わなかったので大変新鮮であり、またこの考え方の重要性を再認識しました。