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ものづくり補助金の将来について

先週ご紹介した朝日新聞の記事に加えて、13日に日経新聞で以下のような記事がでていました。

 

私の支援先にはいませんが、ものづくり補助金で新しい機械を入れてそのまま使っていない企業が結構あるという噂は昔から聞きます。

 

補助金の名称が「ものづくり補助金」ですので、どうしても製造業が新しい機械を入れるための補助金と思われがちですが、本来は新しい取り組みを始めて、売り上げ、利益を増やすための補助金です。

売り上げ、利益が増えない(増やさない)と設備投資はする意味はありません。

 

今後、実績報告がさらに面倒になりそうですが、実績報告ではなく、業績報告をキチンをしてもらう仕組みを作った方が良いと思います。

ものづくり補助金、身内から効果に疑念

2020/11/13 4:00
1378文字
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中小企業庁の政策の効果に疑問を投げかけた経済産業研究所も同じ経済産業省傘下の機関(東京・霞が関)中小企業庁の政策の効果に疑問を投げかけた経済産業研究所も同じ経済産業省傘下の機関(東京・霞が関)

2020年度の第3次補正予算案の策定が始まった政府内で経済産業研究所(RIETI)が6月にまとめた報告書が話題になっている。長年にわたり補正予算で巨額を計上してきた中小企業向けの「ものづくり補助金」について「政策効果があるとは言い切れない」と指摘したのだ。

ものづくり補助金は中小企業が試作品の開発や新サービスの導入、設備投資の費用に充てる経済産業省の補助金。生産性の向上につながる事業を公募して選ぶ。12~20年度の各年度の補正予算で合計7千億円あまりを支出してきた「中小企業予算の柱だ」(経産省中小企業庁の担当者)。

12~13年度に採択した事業と選外の事業の生産性が3年間でどう変わったかを、経産省所管の独立行政法人のRIETIが調べた。証拠に基づく政策立案(EBPM)を進めるために、身内といえる中企庁の目玉政策を俎上(そじょう)に載せた。

生産性の指標には生産額から税額や原材料費を除いた付加価値額を使った。その結果、統計的に有意な差でないものの、補助金を受けた事業のほうがむしろ年平均の伸び率が5ポイント以上低かった。少なくともプラスの効果はみられなかった。

採択の甘さが一因とみられる。申請時に付加価値額を年3%以上高める事業計画を出してもらい、計画がしっかりしている上位一定割合の企業を選ぶしくみだ。8年間で19万3千件の申請のうち4割の8万1千件を採択した。補助金を受け取ったあとで計画を達成できなくても返還する必要はない。実際に未達に終わる企業も少なくない。

同補助金は19~20年度の補正の分がまだ残り、21年度以降も支給は続く。中企庁はRIETIの指摘を踏まえ「これまで申請を幅広く受けすぎた面がある。年内に始める次の公募から要件を厳しくしたい」(担当者)。導入から8年たって制度のあり方が問われている。

経済の下支えなどの名目で規模が膨らむ補正予算は編成が短期間のため査定も甘くなりがちだ。策定中の3次補正も与党から30兆円の国費を求める声が出るなど規模の議論が先行する。効果の不透明な政策が検証なく惰性で続きかねない。

ものづくり補助金の分析は別の課題もあぶり出した。報告書を書いたRIETIの関沢洋一氏は「データの限界に直面した」とふり返る。各年の付加価値額をみるのに使った経産省の工業統計調査は従業員4人未満の小規模事業所やサービス業のデータがなく、全ての申請企業を網羅した分析にはできなかった。

同補助金に限らず教育や社会保障の政策でも成績や所得に関するデータが使えないため効果の検証ができないと研究者らからよく指摘される。

米国の教育補助金は未就学児の算数プログラムなど全国で効果が実証された事業は最大1500万ドル(約15億8千万円)、そこまで明確でなければ800万ドルや400万ドルと差をつける。失業者への経済支援が中心だった英国は大規模な実証試験で就労奨励金に効果があると突き止め、政策に反映した。日本はEBPMで出遅れる。

政府は10月、経済財政諮問会議のもとに学者らでつくるEBPMアドバイザリーボードを立ち上げた。ものづくり補助金や小中学生に1人1台の学習端末を配備する文部科学省の「GIGAスクール構想」のEBPMのしくみをデータ収集の方法なども含めて検討する。地味で時間もかかるが政策効果を上げるために欠かせない取り組みだ。