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書籍㊲売上最小化、利益最大化の法則

タイトル    売上最小化、利益最大化の法則

出版社    ダイヤモンド社

著者     木下勝寿

価格(税別) 1,800円

 

中小企業経営者     ☆☆☆ 

中小企業診断士勉強者  ☆☆☆

 

<内容>

北の達人コーポレーションの代表取締役社長の木下勝寿氏の書籍です。

https://www.kitanotatsujin.com/

 

第1章 売上ゼロでも生き残れる「無収入寿命」という考え方

 経営者の最大の使命は会社をつぶさない事。そのために、売上がゼロになっても経営の現状維持ができる期間である「無収入寿命」を長くすることが必要。 

 「無収入寿命」とは借金などを差し引いた純粋な手元資金で、家賃や給料などの月額固定費を何か月分賄えるかということ。その寿命を延ばすためには、①無収入寿命を何カ月にするか目標を決める、②月次決算時に無収入寿命を算出する、③純手元資金の目標額が貯まるまで大きな投資をせずにコツコツ貯める、④純手元資金の目標額が貯まったら安心してチャレンジする、を実行する。

 

第2章 売上OSが利益OSに変わる!売上最小化、利益最大化の法則

 同じ利益を出すならば、売上は少ない方がリスクは少なく、経営は安定する。売上が大きいと売上に比例してアクシデント量が増える。

そのため、売上最小化、利益最大化を目指す。そのために

・「多産多死」から「少産少死」の経営へ変更し、商品は一生売り続けるつもりで開発する。

・一回買ってくれたお客様とは一生お付き合いするつもりで販売する。

 

 その結果が現在の「北の達人」のビジネスモデルとなった⇒BtoC×サブスクリプション⇒品質の高い商品でロングセラーを狙うビジネスモデルで、定期購入による売上比率は約7割

 考え方としては、利益は目的、売上はプロセス。

 新入社員には、利益とは自分自身が生み出した付加価値分を数値化したもの、付加価値とはお役たち度の度合いの合計の数値化したものと教えている。

 

第3章 会社の弱点が一発でわかる「5段階利益管理」

当社では、利益を次の5段階に分けて管理している。

①売上総利益(粗利)

②純利益(当社の造語)=①ー注文関連費(通販の場合、カード決済手数料、送料、梱包資材、同梱物、ノベルティ等)

③販売利益(当社の造語)=②ー販促費(広告宣伝費等)

④ABC利益=③ーABC(アクティビティ・ベースド・コスト=商品ごとの人件費:人件費を対応した商品ごとに按分)

⑤商品ごとの営業利益=④ー運営費(家賃や間接部門の人件費の按分)

 

 これらの5つの利益を商品ごと、店舗ごとに算出する。これによりどの商品(店舗など)がどの段階で問題があるか一目瞭然となる。

 使い方としては、①利益の分類方法を決定、②各利益管理の経費項目の決定、③月次で共有。

 

第4章 小さい市場で圧勝する商品戦略

 当社は高品質でロングセラーを狙うビジネスモデルを取っているため、同じ製品を生産すればするほど品質は向上し、コストは低下、定期購入してもらえるため新規開拓に掛かるコストも少なくj販促費が安く済む。つまり利益率が上がるのである。

 

 そのために、2匹目のドジョウは狙わず、他社のヒット商品のマネはしない、またビックリするほど良いものができたら発売することとした。その商品開発はお客様の悩みから出発し、その悩みの解決を目的とする。また売れる商品の理由としては、商品自体の品質、品名、デザイン、販促、価格、アフターフォローなどの要因があるが、当社では品質の注力した。またその品質は生産者目線ではなく、生活者の観点での品質であることを徹底した。

 

 当社では顧客満足度は商品の品質に比例すると考えているが、1つだけ例外がある。それは、お客様が使い方を間違えている場合である。そのため、商品の「使い方マニュアル」の作成に力を入れ、必ず同封している。

 

第5章 利益率29%を実現する販売戦略

 販促利益が悪くなっている場合、①販促費の投資効率が悪くなっている場合と、②販促費の先行投資を強化した場合の2つの理由が考えられる。②の場合でもいつ、いくら回収できるのかを明確に把握しなければならない。そのためのマネジメント指標として①上限CPOと②時系列LTVがある。

 

 CPOはコスト・パー・オーダーの略で、一人のお客様を獲得するのに掛かるコストを示す。例えば、純粗利が3000円の商品でCPOが10000円の場合、1回の受注では7000円の赤字、4回目の購入で黒字化したと考えられる。

 次にLTVはライフ・タイム・バリューの略で、顧客が生涯を通じて企業のもたらす利益を示す。該当期間の一人当たりの平均追加購入額の類型が時系列LTVとなる。

 ここから一定期間の販売利益=時系列LTV×純粗利率ーCPOという関係性が導き出される。そして例えば一年間でどれくらいの販売利益を出したいと決めると自然とCPOの上限値が決定する。この上限CPOにより継続する販促活動、停止する販促活動を決定していく。この指標はあるため、新入社員でも決定が簡単に行える。また、上限CPOは全社の利益が最大化する値にて決めることが必要である。

 

第6章 ファンの心をつかんで離さない「演歌の戦略」

 消費者が商品を購入する場合、1回目はマーケティングにより購入する場合が多く、2回目以降のリピートは商品の品質力の寄る場合が多い。また、プロモーションには目立つプロモーションと目立たないプロモーションがあり、目立つプロモーションは自己満足や競合との競争を激しくするだけなので、当社は目立たないプロモーションを目指している。

 またマーケティングは誰に、何を、どう、伝えるかであるが、まず誰にを考える。つまり、より多くの人への認知を目指すのではなく、買いそうな人だけに認知させることを目指し、コストを効率的に使う。その次は何を伝えるかにより差別化できるようにする。何をでも差別化できない場合はどのようににて差別化を工夫する。

 

 当社では、売ることをしない「商品カウンセリング課」を作るなどをして、お客様から愛され続ける「演歌の戦略」を実行している。

 

第7章 未経験でも利益を上げ続ける人材戦略

 仕事の進め方は、総合職中心の組織とアルバイト・一般職社員中心の組織では異なってくる。アルバイト・一般職社員が中心の組織の場合、業務を目的ベースではなく、作業ベースで細分化する。例えば、①入社3日でもできる作業、②ある程度分かっていないとできない作業、③得意・不得意がはっきりしている作業に分ける。これに分けてフローを組む。メリットは1つひとつの作業は簡単なので業務量が増得た場合人数を増やせば対応可能、誰かが辞めた場合代わりが見つけ易いなどがある。

 

 当社は、適正人数と適正業務量を常に考えてきた。それにより、社員に対する要求能力を下げる仕組みを作り、社員がパンクしないようにし、定着するようにしてきた。それにより業績が良くなり社員、特に優秀な人が入ってくるというプラスのスパイラルになっていく。

 もう一つ組織活性化の手段として、GOOD&NEWとクレドを導入した。GOOD&NEWは良かったこと、新しいことを一人1分朝礼などで話し、全員と共有、拍手することである。これにより社内のコミュニケーションが活発化した。このような社内のコミュニケーションを図る仕組みは会社が準備するべきことだと気づいた。また、クレドも朝礼等で各項目を読み上げ、対する意見やエピソードを言うことにより、会社が大切にすることを徐々にだが浸透できている。人は同じ時間に同じ内容を6回聞くと理解すると言われている。

 

第8章 売上1000億、利益300億円を実現する戦略

 当社はデジタルマーケティング(データ等を使ったマーケティング)を行うことにより無駄を省き利益を増やしてきた。特に広告運営を自社にて行い、データに従い無駄な広告を止め、効果的な広告のみを行うことにより利益の最大化を実現してきた。

 

<感想>

 成功した企業の後付け理論の本(すみません)だとは思いますので、なかなか一般の企業に参考にはできないかもしれません。ただ、商品別、店舗別に通常の粗利、営業利益、限界利益などだけではない利益にて業績を判断する方法は必要ですし、各社が自社の状況に合わせて考える必要があると思います。その為のきっかけをくれる良い本だと思います。

 

 ちなみに、目の下のクマ用のクリームは購入していま使用中です。かなりアフターフォローがしつこいです(笑)。